吉祥寺から西荻窪へ~白い初潮

吉祥寺での奇妙な三人の生活は1年続きました。

小学校5年の時に、母が鎌倉から東京に移ってきて、ぼくと父は吉祥寺のマンションを出て、母と西荻窪で暮らし始めました。

その後、その吉祥寺で生活を共にした女性がどうなったのかは知りません。父にも母にもそのことは聞きづらくて聞いていないのです。

ともあれ、一年ぶりに、やっと親子三人の生活を取り戻したぼくは、小学校の方でもクラス替えがあり、あの壮絶ないじめからも解放されました。

一体あの一年は何だったんだ?と思ってしまうくらいです。

というものの、小さないじめのようなものはありました。さすがにあの壮絶ないじめに比べれば、取るに足らない、小さなものばかりでしたので、ぼく自身はそれほど気にしないようにしていましたけど。あのいじめを乗り越えることができれば、他のいじめはちょっとしたかすり傷みたいなもの、そんな想いでした。

さて、そんな小学校5年の生活が始まってすぐに、とある個人的な事件が勃発しました。とある平日の朝のこと。いつものように朝食を終え、学校に行くまでしばらく時間があったのでぼくは何の気なしに自分の部屋で妄想にふけっていました。

そして、いつもと同じように股間をいじっていたのでした。妄想はいつだって決まっています。変身前のアカレンジャー(誠直也)みたいな男が上半身裸で闘っている姿を妄想しながら、股間を触っていたのです。ある一定の時間を過ぎ、それもいつもと同じように絶頂を迎えました。ところが、その時、違和感を覚えたのです。なんと、股間に湿り気を覚えたのであります。

びっくりしました。恐る恐る、半ズボンを降ろしてみると、白いグンゼのパンツが汚れてしまったではありませんか。幸い半ズボンにまでは到達していませんでしたが、白いグンゼは汚れています。かといって、朝だからお風呂に入るわけにもいかず、とにかくぼくは母にばれないように(子ども心にそれは知られちゃマズいことという自覚はあったみたいです)、トイレに行って、パンツの汚れを必死にトイレットペーパーで拭い、股間もきれいにしました。

その後、何食わぬ顔で学校に行ったのでした。ところが、運の悪いことに悲劇はまだ続きます。なんと、その日は健康診断の日だったのです。つまり、身体測定の時にパンツ一丁にならなければいけません。確かもうその時は男女で教室が分けられていたと思うのですが、どうしても、白いパンツの汚れは隠しようがありません。トイレで確認すると、くっきりと黄色いしみができていたのです。

本当に困りました。しかし、そこで仮病を使うということまでは頭が回らず、仕方なしにぼくは必死に股間を隠しながら、身体測定を受けたのでした。

頭の中が真っ白になっていたのか、その時のことはあまり良く覚えていないのですが、特に誰かに股間のことを指摘されることもなく、何とか無事に身体測定が終わり、ほっとしたのでした。

ところが、実はそうじゃなかったということを後で知ることになります。

それから二年後、つまり小学校を卒業する時のこと。仲の良かったクラスメイトのとある男子がぼくの耳元でこうつぶやいたのです。

「ケンちゃんって、意外とおませだったんだね」

って。唐突にそんなことを言われて、何のことかさっぱりわからず、不思議そうな顔をしているぼくに彼は笑いながらこう言ったのでした。

「小学校四年の時の健康診断で、ケンちゃんのパンツが汚れているのを見て、最初はなんで汚れているのかわからなかったけど、しばらくしてからやっとぼくもわかったんだよ」と。

その時ぼくは顔から血の気が引いていくのがわかりました。約二年もの間、ぼくはその時のことは誰にもばれていないと思っていたけれども、実際にはばれていたのです。彼だけではなく、ひょっとしたら、他の人も気づいていたかもしれません。だから、とても焦ったのでした。

でも、今から冷静に考えてみると、クラスメイトの股間を気にしていた彼も実はそのケがあったんじゃないかって、思うのです。ぼくはタイプじゃなかったし、彼はそういうそぶりをまったく見せませんでしたけどね。

今でもたまに二丁目でこの時の話をするのですが、体液が出る前から自慰行為をするというのは、かなりおませなガキみたいですね。しかも、それが今でも続いているのですが、これは筋金入りの変態なのかもしれないと、自分でも認めざるを得ないのであります。

さらに、それに輪をかけているのが、その性的対象が異性ではなく、同性なのですから。ぼくは今でもつくづく自分は男好きだなと思うのですが、子どもの頃からその一途さもまったく変わっていません。

良く友だちに「ケンちゃんはいつから男好きなの?」と聞かれるのですが、そのたびに「おギャーと生まれた時からよ!」って答えるのですが、それもあながち嘘ではないんじゃないかって最近は思っています。

というわけで、その白い初潮というのが、ぼくの小学校5年生の時の一番最初の苦い思い出となったのでありました。

f:id:happyinkdays:20180419210759j:plain

f:id:happyinkdays:20180419210758j:plain

この頃からすでにオナニストだったなんて、誰が想像つくでしょうか!?